エネルギー代謝
テニスの特徴
テニスというスポーツをする時にどのようにエネルギーが作られ使われているのかということを考えてみましょう。テニスというスポーツは試合中にプレーとインターバル(休憩)を交互に行っていくスポーツといえます。ある男子のテニスの試合でのプレーとインターバルの時間比の平均データを見てください。
ハードコートでの1ポイントを取るまでの平均時間 | 6.5秒 |
クレーコートでの1ポイントを取るまでの平均時間 | 8.3秒 |
ポイントとポイントのインターバル | 25.6秒 |
プレー:インターバル | 1:4.4 |
このデータからも分かるようにテニスの1ポイントのプレー時間は10秒以下ということになります。その後、インターバル(ルール上では20秒まで)をはさみまたサーブからプレーを始め、の繰り返しです。
ちなみにルール上、エンドチェンジ間は1分30秒、セット終了後は2分間までインターバルを取れることになっています。
テニスのエネルギー
人間が運動する際に使用するエネルギー源は炭水化物・脂質・たんぱく質です。エネルギー代謝についての詳しい話はこちらをご覧下さい。
テニスを実際にプレーしている時間は平均10秒程度です。プレー中のラケットスイングではATP−PCr系が主に使われています。また、大体1ポイント中に動く距離は平均15メートルほどですので、ショットまでのフットワークの際もATP−PCr系が主に使われることがいえます。
しかし、それはあくまでも1ポイントの間での話であり、テニスというスポーツは100m走のような競技とは違いますので、1ポイント、1ポイントのプレーが断続的に続いていきます。よって、ATP−PCr系に+解糖系の働きも加わっていくことになります。
→テニスではATP−PCr系+解糖系が主に働く。
乳酸代謝の仕組み
乳酸は高強度の運動をした際に筋肉で産生される物質で、炭水化物から「解糖系」によりエネルギーを作る途中過程の物質です。高強度の運動を止めれば、乳酸は「エネルギー源」として消費されます。乳酸は疲労物質とよく言われていますが、大事なエネルギー源となるのです。
しかし、乳酸が消費されずに蓄積していくと体内が産生に傾き体内の化学反応が遅くなり、疲労感を感じていきます。これが、「疲労物質」と呼ばれる所以です。
低強度の運動(有酸素系)では乳酸は蓄積されません。運動の強度が上がることによりエネルギー代謝が「解糖系」にシフトされ、乳酸の蓄積が始まります。このポイントをATといいます。マラソンなどの低強度の運動では乳酸が蓄積されずに長時間継続できますが、テニスは強度の高い運動のためATを超えてしまい乳酸が蓄積して疲労していきます。
→テニスは解糖系が働くため乳酸の蓄積が激しく疲労してしまう
乳酸シャトル
高強度の運動を休みなく続けていくとたちまち乳酸が蓄積されてしまい疲労により動けなくなってしまいます。しかし、先ほどの言ったとおり乳酸は「エネルギー源」であり、運動強度がAT以下になることにより蓄積された乳酸は遅筋線維(低強度の運動時に使われる)や心筋で消費されます。テニスはプレーと「インターバル」が交互にあります。ということはインターバル中に乳酸を消費できれば疲労が蓄積しにくくなります。このサイクルを「乳酸シャトル」といいます。遅筋線維で乳酸は消費されるため止まってしまうよりも軽く動いている方が乳酸は早く消費されます。
この「乳酸シャトル」の機能が高くなることにより、より乳酸の消費が早くなり疲労が蓄積されにくくなります。この能力を高めるにはインターバルトレーニングが有効です。これはダッシュ(高強度=ATP−PCr系+解糖系)とジョグ(低強度=有酸素系)を交互に行うトレーニングです。この時間配分は競技でのプレーとインターバルの周期に合わせて設定するのがベストなので、「6〜10秒ダッシュ&20〜30秒ジョグ」という組み合わせがオススメです。
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