ストレッチングの目的
競技前(ウォーミングアップ)
- 関節可動域(ROM)を広げることでより大きな動きを生み出す
- 柔軟性のある筋肉は硬い筋肉に比べ、ストレスに強いためケガなどの防止になる
- 使おうとする筋肉に対して信号を送る
競技後(クーリングダウン)
- 血流を促進させ、運動中に産生された疲労物質を除去する
- 収縮を繰り返した筋肉をしっかり伸ばす
などなど正しい方法でストレッチを行うことにより多くの良い効果がうまれる!!
ストレッチングの種類
バリスティックストレッチ(動的ストレッチング)
ラジオ体操など準備運動の一部として行われている反動を使い行うストレッチングです。しかし大きな反動で行うと当然筋肉や腱に損傷を受ける可能性があるので知識がなく行うと危険を伴います。
また、筋肉は急激に伸ばされると逆に収縮しようとする性質があります。これを伸張反射(ストレッチリフレックス)といい、バリスティックストレッチングはこの伸張反射を引き出しやすく、柔軟性だけでなく反射や反応を高める効果もあります。
動作中の注意として柔軟性を高めるためにバリスティックストレッチングを行う際は、伸張反射を起こさないようにゆっくりと息を吐きながら行うことが大事になります。
ダイナミックストレッチング(動的ストレッチング)
リズミカルな関節の曲げ伸ばしや回旋などを行い、相反性抑制による筋肉の弛緩や柔軟性改善を期待するストレッチングです。ブラジル体操などといったものがこれに含まれます。柔軟性(動的柔軟性)や、筋の弾力性、ボディバランス、動作スピードの向上、神経―筋の促進など多くの効果があり、スポーツの分野においてとても重要なストレッチングといえるでしょう。
スタティックストレッチング(静的ストレッチング)
反動や弾みをつけずに、ゆっくりと筋肉を伸ばしていくストレッチングです。ストレッチングといって初めに思い浮かぶのはこのストレッチングでしょう。バリスティックと効果はあまり差はなく、なおかつこちらのほうが安全であり、筋肉痛の予防や回復にも効果があります。
このストレッチングの最大の目的は緊張をとることであり、反射的な要素が低いため運動後のクールダウンに適しています。このストレッチングを行う際は、伸張反射を引き起こさないようにゆっくりと息を吐きながら行います。筋肉が硬いうちは長く息を吐き続けることが難しいですが、筋肉が柔らかくなるにつれ楽になってきます。息を吐き続けられる長さにあわせて行うことが効果的です。
また、主動筋に対して拮抗筋というものがあり、主動筋が収縮すると拮抗筋はリラックスして弛緩する性質があります。このため交互にリラックスされるように主動筋と拮抗筋を交互にストレッチするとより効果的でしょう。
PNFストレッチング
PNFストレッチングとは、筋―神経の“拮抗筋を収縮させれば主動筋は緩む、また主動筋を収縮させてもその後に主動筋が緩む”という性質を利用したストレッチングです。
このストレッチングと他のストレッチングとの違いとしてパートナーの力を借りて柔軟性だけでなく抵抗(普通は6〜8割の抵抗で行う)に対して筋肉を収縮させることにより、同時に筋力アップも期待できるという点です。柔軟性改善にはPNFストレッチングが最も優れているといわれています。
一般的に用いられているPNFは「ストレッチング」⇒「筋肉の収縮」⇒「ストレッチング(この時に筋肉の弛緩が得られる)」というパターンです。
ストレッチの実践例
1.筋緊張もなく運動前の状態
@ウォーミングアップ(ジョギングなど)
↓
Aスタティックストレッチ(各10〜20秒)
↓
B動的ストレッチング(バリスティック、ダイナミック)
※A=血行促進・柔軟性向上(静的可動域拡張)→B=スムーズな動きを生み出す(動的可動域拡張)
スタティックストレッチのみだと反射的な関与がないため、その後の運動においてスムーズな動きを生み出すという効果はなく、ウォーミングアップには不向きである。動的ストレッチは神経―筋への作用が大きく、その後の運動においてスムーズな動きを生み出します。また実際にスポーツ動作に近い動きで行えるのでスポーツでよく使う動作を中心に行っていくとより効果的です。
またPNFストレッチングは筋が弛緩している場合に行うと逆に筋の緊張を助長してしまう危険性があるので×
2.トレーニング後の筋が緊張している状態
@クールダウン(ジョギングなど)
↓
Aスタティックストレッチ(各10〜20秒)
↓
BPNFストレッチング
↓
Cスタティックストレッチ(各10〜20秒)
※AC=柔軟性向上・血行促進(乳酸の除去)→B=筋緊張の低下
トレーニング後はリラクゼーションを促すことが第一の目的となります。
より効果をあげるために
1)ストレッチング前に筋温を上昇させておく
軽いランニングなどを行い、血行を活発にしておく。@筋粘性の低下A柔軟性の増加B神経機能の亢進などの効果が得られます。
2)表層筋→深層筋・体幹→四肢へとストレッチしていく
表面の筋肉が固い状態ではより深いところにある筋肉はストレッチされにくいため表層の筋肉からストレッチしていき、また体幹の筋肉(腹筋、背筋など)は身体のバランスを保つ作用(スタビライゼーション)があり、常に働いているため筋肉が緊張しやすいため、ストレッチは体幹の筋から行っていきましょう。
3)筋の連結に気をつける
筋肉は隣接している筋とお互いに影響し合っています。そのため一つの筋肉が緊張していくと他の筋肉にも緊張が波状していきます。
例)腰痛による腰の痛み・緊張→太腿→下腿→足背へと痛み・緊張が拡大されていきます。
4)伸ばす筋肉を意識する
ストレッチをしていく目標の筋肉をしっかり意識し的確にストレッチしていきましょう
5)無理に伸ばしすぎない
@過度のストレッチは筋細胞を微小断裂させてしまい、筋の弾力性の減少を起こします。A過剰にストレッチさせると伸張反射を起こし筋の緊張を助長してしまいます。B過度のストレッチは痛みの発生により筋の緊張を起こします。
6)呼吸を止めない
呼吸を止めながら行ってしまうと逆に筋肉を緊張させてしまいます。
7)左右差を確認する
右脚の方が伸ばしやすい、伸ばしづらいなどと「左右差」が出てきます。利き腕や利き足があるように、人は常に非対称に体を使っているからです。体を非対称に使っていくほど左右のバランスは崩れていき、よく使われる筋肉が短縮を起こしてしまうのです。これによりパフォーマンスの低下、障害発生などへとつながってきてしまいます。
伸ばしにくさを感じた時は特にそちらの筋肉を重点的に伸ばしていきましょう